たてものがたり

エピソード1

スケルトン階段でなくては、新築する意味が無い。

都内のある会社から本社新築工事の提案を依頼されました。
出来るだけ広い面積と吹抜けのスケルトン階段をコンセプトにした事務所ビル。
T社長は階段にとてもこだわりがある方でした。

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準防火地域で3階建ての事務所。通常は準耐火建築物にする必要があります。
そしてネックになるのが竪穴区画。建築基準法施工令112条第9項では主要構造部を
準耐火構造とした建物は竪穴区画が必要となっています。
つまり階段室として囲まれた階段しかできないのでは??
「3階だと通常、竪穴区画が必要になるので事務所内のスケルトン階段は
 難しいかもしれませんよ。」とT社長には依頼時に回答しました。
 

我々建築士はキーワードで、関わる法規があるのでは?と反応します。
例えば「200㎡、300㎡、500㎡…」床面積がこの数字になると、排煙、省エネ法、自動火災報知機、構造計算とか、
「3階、5階、6階、7階…」階数がこれ以上になると、非常用進入口、2以上階段、構造適判、
連結送水管が必要だ、他何かなかったか?と言うような具合です。
今回の場合も「3階、準耐火」というキーワードで竪穴区画が、まず頭に浮かびます。
 

「吹抜けにスケルトンの階段でなくては新築する意味が無い。」
 このようなニュアンスの言葉を言われ、検討してみますと事務所に帰りました。
 

ちょっとまて、準耐建築物であって主要構造部が準耐火構造でなければいいのでは?
いわゆる準耐火建築物ロ-2と言う物で、梁・柱が不燃材料でその他の主要構造部が準不燃
材で出来た建物(その他にも条件有)。これならば、竪穴区画がなくなる!!
正直この法律が何の為にあるのか理解が出来ないのですが、問題は解決しました。

item02.png

そしてこんなにカッコよく出来上がりました。T社長にも喜んでいただけました。

また、この建物は間口が狭く3法的に必要な非常用進入口に替わる窓が殆ど占めて仕舞います。
折角なら法的に必要な窓でデザインしてしまえ!!
と言う事でこんなファサードになりました。

item03.png

無事、役所も消防もクリアして、お施主様にも喜んでもらえる建物が出来ました。
依頼されてから出来るまでの物語の一部です。
お施主様にとってはそれ以前から、そしてこれから「たてものがたり」は続いていきます。

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